「そこをなんとか!!お願いします‥‥‥。」
店長は最敬礼のポジションからさらに膝が曲がってしまうほど深く頭を下げる。
「店長さん、俺もほんとはそんなことしたくねぇんだ。
ただ、返してもらわねぇとこっちにも生活があるんでねぇ。
店を売りたくないなら金を返せばいい。それが無理ならこの店を売れ。これは絶対だ。
借りたもんはきっちり返すって小学校で習っただろ?」
今度は懐から煙草とライターを取り出し、煙を燻らせた。
禁煙なんですけど‥‥‥。
なんて、口が裂けても言える空気ではない。
いくら借金を作ってしまったからって失うのはとても辛いことだろう。
「いくらなんでもそんな大金今すぐに用意するなんてできないです。かといって、この店がなくなったら明日からどうやって生活すればいいのかわかりません。」
「そうか。だったら、明日まで待ってやる。
明日、完済できなければ店のもの全て差し押さえさせてもらうからな。」
「そんな‥‥。」
明日って‥‥。いくらなんでも無茶すぎる。
いくら借金を作ってしまったからと言っても、店長自身が借りたものじゃないのに店を失うのはとても辛い。
店長は絶望のあまり、膝からその場に崩れ落ちた。
咄嗟に私は店長の肩を抱き、連條を睨み上げた。
だけど、連條は顔色一つ変えずに自前の携帯灰皿を懐から取り出して、煙草の火を消した。
「邪魔したな。」
そう言って颯爽と出ていくその後ろ姿は、人一人の希望を打ち砕いたにも関わらず、なぜか輝いて見えた。

