「美紅ちゃん…。ありがとう。」
店長が立ち上がって、その場で私にお礼の言葉をかけた。
そのときの店長の笑顔には優しさの中ににどこか切なさを感じた。
そして、一瞬目を伏せ、今まで頑なに目線を合わせようとしなかったのにようやく連條に視線をやった。
「連條さん…。息子に借金は必ず返済させます。ですので、この店だけはご勘弁ください。」
そう言うと、店長は男に向かって頭を下げた。
それはすれ違いざまに交わすそれでも、いつもお客さんに向けてするものでもなく、最敬礼という最も深いお辞儀だ。
「店長……。」
いつも見ている大きな背中が今はなんだか小さいように見えた。
だけど、店長からはこの店をなんとしても守りたいという切実な思いが伝わってきた。
「そんなことしても、期日は今日までだ。これ以上延ばすことはできない。」
だけど、やはり連條にとってはこの店がこっちにとってどんなに大切なものかなんてことはおかまいなし。全くもって響かない。

