「トシもトシだがお前もお前だ。

守ってくれと言ってきたのはどこのどいつだ?」

最初に沈黙を破ったのは社長の方だ。


「私です。」

「お前は何か。

オレをなめてるのか。」


「いえ、滅相もございません。」


「別に契約破棄されても文句言えねぇんだぞ。」

「勝手なことをしたのは申し訳ないと思ってる。

だけど、自分のしたことが間違ってたなんて思えないわ。」

潜入して情報さえ手に入れば仙道を失脚できる。

子どもたちも大人の利益に利用されずに済む。

一体何が問題なのだろうか。

「お前、オレが思っている以上に頭沸いてるみたいだな。」

「どういう意味よ!?」

「そもそもお前が自分の身を危険に晒してまでなぜそこまでする必要ないだろ。いくら人体実験が行われていると知ったからってお前とは何ら関係のない子どもだ。お前がここまでする義理はないだろう。それとも何か。同情でもしたか。」


「同情じゃない。私はただ、こんなこと許されるわけないと思って‥」


「そんなのただの偽善にしかすぎない。お前のエゴに周りを巻き込むな。」


「確かにそうね。そうよ。これは私のエゴなのかもしれない。ただ、初めて研究所の監視カメラをハッキングしたときそこに実験中の子どもの姿を見た時、弱いものを搾取して己の私腹を肥やしてふんぞり返っている金持ちどもにむかついた。

単にギャフンと言わせたかったの。それだけことなの。」


それに、御堂は政治家。何より国税という国民の血肉を大量に懐に収めているくせに好き勝手しているのが腹立たしい。