「それより、ご飯よそったら食堂に運んじゃって下さい。
もうすぐ子ども達が来ます。」
あからさまに話を逸らされた。
もうこの話をするなと言わんばかりに背中を向けられ、更にはオレをこの場から遠ざけようと食事を運ぶよう促してきた。
だけど、気づかないふりをしてもう一歩踏み込んでみる。
「火灯はいつからここにいるんだ?」
「……半年くらいです。」
「わりと最近なんだな。」
「…えぇ……。」
「そういえば、ここに来る前にここの子どもが職員に殺されたって聞いたんだけどほんとなのか?」
「……その話はあまりここでは口にしない方がいいかと……。」
「なんで?」
「…さぁ…私は何も……。私もここに来る前の話なのでよく知らないのです。ただ、みんなそのことに関しては口にしないようにしているような……。」
なるほど。暗黙の了解でみんなその話題には封印をしているというわけか。
「それに、好奇心旺盛なのは結構ですけど、あれこれ首を突っ込むと身を滅ぼしますよ。」
「どういう意味だよ。」
「ほら。映画や漫画だと私たち下っ端のような人間が何かの手違いで知らなくていいことを知ってしまうと消されてしまうのがセオリーでしょ。」
「それはドラマや漫画の話だろ。現実でそんなこと簡単に起こってたまるかよ。」
まぁ、実際人一人死んでいるわけなんだけれども。
「とにかくここでうまくやっていきたいのならそのことはあまり口にしない方が身のためですよ。」
そう言って灯は食事を運ばないオレに代わって自分で食事を運ぼうとさっさと厨房を出ていった。
厨房に残されたオレは盛り付けられたサラダからキュウリを一切れ摘まんで自身の口へ運び入れ、口の中で噛み砕かれていくキュウリの音がやけに耳に響いた。

