「だからと言って、そんな大きなリスク犯せないだろ。

契約もそうだが、オレはお前をっ……。」


そこまで言ってハッと我に返った。

言わないと決めていたことがつい口に出してしまいそうになった。


「え?なによ?」


途中でやめてしまったことを美紅も不思議に思って、何を言おうとしたのかオレの次の言葉を待っている。


「……なんでもない……。

とにかくここまで情報を掴んだのは上出来だ。

後は家で大人しくしてろ。」


「何よ!?裏社会の帝王なんて呼ばれてるくせして!

そのみてくれで実は小心者なんじゃないの!?」


テーブルを勢いよくバンっと叩き、オレに悪態をついてきた。


「なんでそうなる。

話にならん。今日は大人しく帰れ。

高城。トシに家まで送らせろ。」

これ以上話しても不毛だと思い、スッとソファから立ち上がって高城と美紅を置いて部屋から出て行く。


「ちょっと!

話はまだ終わってないわよ。」


美紅は後を追うように付いて来たが、部屋を出て1秒も経たずに扉がパタンと閉まる音がした。

その音はまるでオレがもうこれ以上話すことはないという気持ちを代弁してくれているかのようだった。