「ウソ…カタツムリのくせに、こんな魔法まで使えるなんて…
ロゼル!? ロゼルッ!!」

倒れたまま動かない。

「ロゼルーッ!!」

肩を揺する。

返事がない。

しかし息はしている。

ただの剣士なら即死もありえたが、魔法剣士が備え持つ魔力が、魔の雷を和らげたのだ。

「しっかりして!
ロゼル!」

アンコクマイマイが殻を左右に大きく揺らし、氷の籠が弾け飛ぶ。

「ロゼル!」

「…ス……逃げ…」

「あたしの杖を燃やして!」

「………」

「早くッ!!」

アンコクマイマイが大口を開けて二人に迫る。

その眉間で、杖に小さな…

ろうそく程度の炎が点った。

「ブーストッ!!」

スリサズの求めに応じ、杖が、秘めた力の全てを一気に解放する。

一見するとただ、樫の木の枝を削って、持ちやすいよう形を整えただけとも取れる棒切れ…

しかしその一削り一削りは、さる高名な魔道士によって、膨大な魔力を注がれながら刻まれたのだ。

その封じられた魔力が爆発し、杖から広がったオレンジ色の爆炎が、一瞬でアンコクマイマイを包み込む。


「ピギグギョゲギギョオオオオオッ!!」


アンコクマイマイが悶え、暴れ、転げ回る。

「きゃあっ!」

撒き散らされた泥しぶきを頭から浴びて、スリサズが吹っ飛ばされた。

降り続く雨は、炎に触れる前に蒸発し、湯気で周囲が真っ白になる。

香ばしい匂い…

魔物相手にこんな表現はふさわしくないが…

肉の焼けるニオイが辺りに漂い、今までで一番大きな絶叫の後、アンコクマイマイの巨体は、遂にピクリとも動かなくなった。