桜舞う-another story-




「あっねぇ」


姿が見えなくなった夏妃さんの声だけが聞こえる


「あたしに波夏重ねた?」


はっとした

俺の腕の中にいた夏妃さんに

波夏の面影を探すことはなかった



1度も



そんなことは初めてだった



「千秋?」

夏妃さんがひょこっと顔だけ出す



「…いえ

考えもしませんでした

1度も」



「…そっか

あたしも初めて男に廉を重ねなかったよ」

夏妃さんはそれだけ言ってリビングを出て行った

波夏のことを考えずに寝れるんだ俺



……




思わず笑みがこぼれる