ふと視線を感じて再び顔を横に向ける
夏妃さんの瞳に自分が映る
「なんですか?
なんか変でした?」
夏妃さんが首を横に振る
「千秋ほどの人
きっと女たちはほっとかないだろうなって思って」
「そんなことないですよ」
「全部断ってるだけでしょ?
鈴が“千秋は真面目すぎる”
って言ってたよ?
少しは女に逃げろって」
鈴……
「他の女に波夏重ね始めたら終わりだと思うんです
他人に重ねなきゃ無理になったら
それはもう波夏の前にはいられない」
「ふーん
それが千秋のポリシーか」
なんでこんなこと話してるんだろう
誰にも言ったことないのに
あーそっか
夏妃さんだからだ
同じような境遇で
俺が下で
見え張らなくていいからか
俺は目の前に置かれたマティーニを口に入れた
今まで飲んだマティーニで一番美味しく感じた



