きっと奈々は、怒るだろうな。

自分の親が苦しめばいい、何て考えてる俺を。

きっと、怒るだろう・・・。

でも、何年も続いたこの悲しさと寂しさを俺ばかりが味わうのはおかしいだろ?

・・・いつも一人ぼっちなのに、親父とお袋が揃った日だけ家族のまね事をしてさ。

皆がそろって嬉しいなんて気持ち、俺はなかった。

ただ、お袋が今どんな気持ちで此処に立っているんだろうって事ばかり考えてた。

涙なんか、枯れちまった。

お袋が知らない男と抱き合うのを見た日、握りしめていた宝物のビー玉を帰り道川に投げ捨てた。

透明でキラキラ光るビー玉と一緒に、あの日俺は全て捨てたんだ・・・。

本物の家族も、涙も―・・・。