ずっと気にしていなかった。

親父とお袋の事なんて。

今もきっと変わらないであろう、お袋の生活。

中指と薬指を行き来する、指輪。

何ひとつ変わるわけがないと、たかをくくってた。


「・・・最近、何かあったのか?」


だけど、余りにも親父の声が寂しいから。

まさかバレたんじゃないかって、不安になる。

バレればいい。

バレてしまえば、全て終わる。

でも、バレた時。

それからを決めるのは、俺じゃないから・・・。


『いや・・・』

「ああ・・・そうか・・・」


その場所に帰るかを決めるのは俺だけど。

俺が帰る場所を作っておくかを決めるのは、親父達だ・・・。


「近いうち、帰るわ」


帰っても、俺はどうしたらいいんだ?

また、アイツの家族という演技に付き合わなければいけないのか―・・・?