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騒ぎ疲れて眠ってしまったチャ太郎の身体をゆっくり抱き上げ、厚く積もった雪を踏みつける。


「お前、やっぱり重くなった・・・」


約半年ぶりの家は、本当に懐かしいって言葉以外出てこない。

いつの間にか雪は止み、雲の隙間から太陽が顔を出した。

大嫌いだった家。

帰りたくなくて寄り道したり、学校が終わったら友達の家に向かったりもした。

でも・・・。


「・・・チャ太郎、もうひとつのお前の家だ・・・」


今日は寄り道せずに、真っ直ぐ帰って来れた。

チャ太郎を抱く腕とは逆の手で、カチャっとドアに手をかけ、ゆっくり開ける。

ドアが開く音が聞こえたのか、キッチンの包丁の音が止まった。

パタパタと走る足音と共に、いつもの染みのついたエプロンを着るお袋が顔をゆっくり出す。


「・・・寛久・・・おかえり・・・なさい・・・」


俺の顔を見るなり、今にも泣きそうな声でお袋は出迎える。

そして俺も・・・。

震える声で返事を返してやる・・・。


「・・・ただいま、母さん」


まだ遅くないと信じる。

俺達家族の、家族への始まりの合図―・・・。





《完》