部室の中は、結構広かった。しかし、部屋中に衣装や小道具を入れたダンボール箱が乱雑に置かれており、足の踏み場が少なかった。真ん中あたりには、四角いテーブルがあり、その上には、プリントや台本らしき小冊子がたくさん散らばっていた。


そのテーブルの脇には、色あせたソファがあり、そこにひとりの女生徒が、横になって洋平を見つめていた。


髪の長い、大人っぽい顔つきの女生徒だ。上履きのふちが緑色であることから、二年生だと分かる。


彼女は洋平をまっすぐに見つめていた。


何や、いるんやったら、返事してくれたらええのに。


洋平は頭をさげた。


部室には、彼女しかいなかった。他の部員は、まだ来ていないようだ。


「あの、演劇部の方ですよね」


「何?」


横になった姿勢をくずさぬまま、女生徒は口をひらいた。