くすぐったい気持ちになりながら、洋平はつぶやいた。


「あほですね」


「そこがかわいいんやないか」仁さんは苦笑した。「おれも川本を狙っとったんやけどの。まさかおまえに取られるとは思わんかったわ」


洋平は目を丸くした。


「そうやったんですか?」


「おう、先週告白したんやけどの、ふられてしもた」


ふたりは店のおばちゃんにお礼を言ってからお好み焼き屋を出た。
冷たい風におそわれて、思わず身をちぢめる。
商店街の電柱に申し訳程度に飾られた電飾を見て、今日がクリスマスだったことを思い出す。




仁さんと別れたあと、洋平は公園に寄った。
そこに設置されている自動販売機でホットココアを買い、手を暖めながらベンチに座る。
そのとき、後ろから誰かに肩をたたかれた。
ふりむくと、あちょお、という声と共に手刀がふってきた。
あわててよけると、手刀は耳元で空を切った。
顔をあげると、ベンチの後にミツキが笑顔で立っていた。