「衣装が重くて走りにくかったけど、まあ、なんとか間に合ったけんよかったわ。それにしても熱いなあ」


そう言って、少女は冠と白髪頭のカツラをとった。活発そうな黒髪のショートカットが、下からあらわれる。


ああ涼しい、とつぶやいて、少女は目をつぶった。風がふき、前髪が少しゆれる。


こうして見ると、結構かわいかった。


洋平の胸が、とくんと鳴った。


「じゃあ、そろそろ行くわ。コーヒー、ありがとね。あ、それともしよかったら、舞台発表ぜひ見に来てな」


それじゃ、と言って、少女は体育館の方へむかって元気よく走り去っていった。


洋平は、缶コーヒーを大事そうに持ち直しながらそれを見送った。