翌週の放課後、淵上の書いてきた台本が、コピーされて部室で全員にくばられた。


題名は「十人のサンタクロース」。


あらすじはこうだ。
クリスマスの夜、ひとりの女の子の部屋に、とつぜんサンタクロースが十人もやってくる。とまどう女の子にむかって、サンタクロース達は、それぞれが、自分が本物だ、他の奴らはみんな偽物だと主張する。女の子は、彼等の主張をひとりずつていねいに聞いて、誰が本物なのかを推理する。はたして、女の子は、本物のサンタクロースを見分けることができるのか。


「これいい」


誰よりも早く台本を読み終わったミツキが、明るい声をあげた。他の部員達も、賛同してうなずく。


「ありがと」


ソファな寝転んで天井を見つめたまま、淵上が礼を言った。たった一週間で書きあげたというのに、疲れた様子がない。
仁さんが台本のページをとじて言った。


「じゃあ配役を決めておくけん、誰がどの役についても大丈夫なように、みんな、台本の中身を頭にたたきこんどけよ。あ、それと麻見」


「え?あ、はい」


いきなり呼ばれて洋平は少しあわてた。


「おまえ、今週の土曜日の昼、空いとるか?」



記憶をさぐってから、洋平はうなずいた。


「藤沢に聞いたで。舞台設計をやるんやったら、その舞台を見とかんとの。幼稚園に行って、お遊戯会で使われる講堂の下見をしてくるけん、おまえもいっしょに来い」


「はい」


下見と聞いて、洋平は身をひきしめた。
舞台設計の、「仕事」をまかされたのだという実感がわいてくる。