放課後、屋上に集まった部員達にむかって、仁さんがやや上気した面持ちで言った。


「昨日、顧問の渡辺先生から電話があっての。クリスマスに、近くの幼稚園でお遊戯会がおこなわれるんやけど、それにうちの部が参加して、何かやってくれんかと頼まれたそうじゃ」


部員達はどよめいた。
外からそんな依頼が来るなんて、この部では初めてのことだ。
どよめきが静まるのを待ってから、仁さんはつづけた。


「なんでも幼稚園の園長さんが、文化祭でのおれらの芝居を見て気に入ってくれたそうじゃ。おれはこれを引き受けようと思っとる。でも、一応みんなの意見を聞いておきたい。引き受けることに賛成のやつは手をあげてくれ」


当然のように全員が手をあげた。
仁さんはうれしそうに笑った。


「よし、決まりやな。それじゃあ淵上、来週までに、クリスマスにちなんだ子供向けの芝居をひとつ書いてきてくれ」


来週までなんて難しいのではないかと洋平は思ったが、淵上はあっさりとうなずいてみせた。


「今日が十一月二日やから、クリスマスまで、あと二ヶ月くらいか。台本ができたら、藤沢と話しあって配役を決めておくけん。みんな、気合い入れてきや」


はいっ、という全員の返事が屋上にひびいた。


練習中、部員達の顔つきが、いつもとちがって見えた。誰もが今回の話を、心から喜んでいるのだ。洋平も、なんだか祭を待つ子供のような気分になってきた。