三田村の話によると、こうだ。
昨晩の深夜一時頃、部屋の窓をたたく音がして、三田村はぼんやりと目をさました。ゆっくりと起き上がり、窓の方を見た。
誰かが窓の外にいた。人影が、屋根の上にしゃがみこんでこちらを見つめていた。暗闇のせいで顔つきはわからない。見覚えがあるような気がしたが、誰なのかは思いだせない。
人影は、窓の鍵をしきりに指さしていた。どうやら開けてほしいらしい。
そのとき三田村は寝惚けていた。ものすごく寝惚けていた。だから、はいはい、いらっしゃい、と訳のわからないことをつぶやきながら、窓の鍵をはずしてしまった。
即座に窓がひらかれ、人影はいきおいよく飛びこんできた。そしてそいつは畳に着地するなり、三田村を押したおした。
ちらかした漫画が背中でひしゃげる感触を感じて、三田村は完全に目をさました。
強盗か、と思って背筋が寒くなった。
人影は、三田村の上に乗っかったまま、動かずにふるえていた。
だんだんと目が慣れてきて、三田村は人影の顔が見えるようになった。
「淵上?」
人影が固くなった。
間違いない、淵上恭子だ。



