その日は、秋の文化祭の当日だった。


校舎全体がにぎやかに飾りつけられ、壁という壁に、クラスの出店や部活動の出し物のポスターが貼られている。


洋平のクラスである一年二組では、お化け屋敷をひらいていた。


午前中、洋平は客を驚かす役をやっていた。


顔をケチャップで血まみれにし、ビリビリに破いた古着を身につけ、壁にはりついたゾンビを演じた。


うめき声をあげ、体を震わせながら客を驚かそうとしたが、どの客も怖がらずに、バカにした目をしながら洋平の前を通り過ぎていった。


中には、蹴りをいれてくる不良や、股間にパンチしてくる小学生といったひどい客もいたので、交代の時間になる頃には、ひどく疲れていた。


屋台の焼きそばで昼食をとったあと、人気の少ない校舎の玄関前へ向かった。


そこに設置されている自動販売機で缶コーヒーを買い、それをゆっくりと飲んでいると・・・


前述の王様があらわれたというわけだ。