校門のほうから、王様が走ってきた。 見間違いではない。立派な冠をかぶり、見事なひげを生やし、豪華な服を着た王様が、背にまとうマントをはためかせながら、こちらへ向かってくるのだ。 麻見洋平は、口にふくんでいたコーヒーを思わずふきだしそうになった。 ここは西洋のお城ではない。 日本の田舎の高校である。 そんなところに、なぜ王様なんてものがあらわれるのか? 洋平は混乱した。