「生きる全て? 分らないわ……だって、りんさんの人生は、りんさんのモノ。それをお父さんに全部捧げるって……」


「それが恋というモノ。彼女の愛し方なんだ。だがそれが恋でしかないことに気付いていないんだ。愛は自己で、あってはならない……」


「難しいわ? 先生、分らないよ」


――猿田先生、猿田先生、至急職員室に来てください。お電話が入っております。


校内放送が流れ、猿田は忌々しくスピーカーを見上げた。


「……とにかくだ。りんさんは今普通ではない。りんさんだけじゃなく、周りにも気をつけるんだ。分ったかい? 

僕はりんさんも好きだが、君も大事に思っているんだ。これからは携帯をこっそりと持つがいい。なにかあったら助けを呼べるからな」