「どうして来たの、るい……」


「あらー綾ちゃん、やきもちぃ? 分かるよーるい君はカッコイイからね。そんなに怖い顔しないでよ、ほらこっちへ来て、夕食をなににするか決めましょうよー?」


綾はそのまま階段を下りて、僕の側へ来た。そして大人しく隣に座り、僕の顔をじっくり見ている。


「いろいろ心配なのもあったんだ。ほら、江藤りさの件でも急に早退しちゃったし……いつでも相談に乗るよ」


「……うん、ありがとう」


綾は自分の膝をじっと見つめ、なにかを考えている様子だった。


「お寿司で良いかな? お寿司が嫌いな人はいないよね? それとも中華とかにする? ピザが良いかな?」


「僕はなんでも良いです。ここで食べるものはどれでも美味しそう! 綾はなにがいいの?」


「私は……それより、るい。帰った方が良いわよ、うちにいても面白くないよ」


本当にそう言っているの? それとも、これから来る男のため?


「良いじゃん! 僕が来て嬉しくない?」


なんで黙って俯くの?


以前、少しだけ触れ合った唇を、恋焦がれ見惚れる。まるで遠い昔のよう……あの時は、君をやっと手に入れられたと思ったのに。