「誰かって? 綾にそんな相手いるはず……つっ!」


るいの耳たぶに歯を立て、そっと噛んだ。


「こんなに美しい顔の僕を差し置いて他にいるはずないと? そう思っているんでしょう。自意識過剰ね」


「……りんさん!!!!」


離れようとする天使が私の中でもがいている。


「クラス中、いや町内中から求愛され、こんなに自惚れやさんになってしまったのねぇ……お生憎様。綾は毎晩、男を連れ込んでるわよ」


もだえる天使の動きが停止した。若く張りの良い肌に、皺が寄る。


「う、嘘だ! 綾は、そんな汚らわしい人間ではない!」


「汚らわしい? あーら、まるで僕は汚れてまぁーす! という言い方よそれ。ねぇ、貴方……神谷君に何をしたの?」


るいの瞳は、まるで悪魔を目の前にしたように驚愕している。


「そ、それは」


「オバサン、なぁーんでも知っているのよ。神谷君もるい君も汚れちゃったんだよね? 神谷君は違うか。貴方の罠に落ちただけですもの……汚れているのは、るい君。貴方だけよ」


「わあああ!!!! ち、違う!!!!」


天使が私を跳ね除け、壁際まで下がった。視線だけは逸らさずじっと見ている。


「怖がらないで。私が助けてあげる、綾も貴方のモノになるわ……」


「ほ、本当に?」