「綾ちゃーん、朝御飯出来てるからねー早くしなさい~! 遅刻しちゃうわよー!」


張り上げてる、りんの声が下から聞こえる。


――もっと、詳しく読みたいのに。重要ななにかがあるような気がしてならないよ。帰ってから見る? 携帯もあるけど料金がいつもより掛かるよね? 変にアクセスしたら、それこそサイトがばれてしまう。


心残りだがシャットダウンし、鞄を持って下へ降りる事にした。


「ゲームおはよう。朝御飯だって! 昼間は、りんの行動をちゃーんと見張ってるんだよ。分かった?」


「ワンワン!」


舌を出し、眼をくりくりとさせていた。ドアを開けると、分かっているのか、分かっていないのか、前足に勢いをつけて階段を下りていった。


――なにか遭ったら猿田に頼めばいっか。今日も夕飯食べに来るんだろうな……。


部屋を飛び出すと暗い人影がぼぉーと気配を消し、立っていた。


「お、お父さん! どうしたの? お酒臭いよ?」


――昨日のお酒が抜けなかったの?


「綾、俺は馬鹿だったのかも知れない……」


父はフラフラと体を揺らし、辛そうに壁に寄り掛った。


「え、何? ……歯を磨いて、顔洗って。会社に行く時間になっちゃうよ?」


「ああ、そうだったな。ちょっと朋子を思い出してね。弱気になってしまったようだ。今の幸せは間違ってないよな」


――失敗だよ。


と言いたかったけど我慢をした。今にも涙を流しそうに、悲痛の表情をしていたから。