――拓也さん、新婚生活は楽しかったわ。


貴方を手に入れた時、私は気持ちが踊り、足に地がつかないくらい有頂天だった。でも最近は、ちょっとだけ疲れてきたわ……毎日貴方の顔を見れるなんて、幸せなのは間違いないんだけど、母親って難しい。子供なんて、じきに懐いてくれるかと思っていた。でもそんな安易な考え間違いだったのよね……挫けそうで、堪らない。


心はそんな思考ばかりが巡るのに、貴方は元教え子のりりかと浮気をしているの? あの女だけは絶対に駄目! つまみ食いだとしても、許さないわよ!


私はそう思っていた。でも今は、貴方を裏切ってしまった今は……強くは言えないのかも知れない。


きっかけは人の眼だった。


いつからだろうか? 人目を過剰に意識するようになってしまった。


隣近所の視線や、すれ違う人の目つき……なんでだろう? 粘りつくような眼差しに見えてしょうがない。それとも、みんなが私を見ているという錯覚に、取りつかれてしまったんだろうか?


特に隣の栗田さんちの美樹子さん。私を偵察するような姿勢や態度――前から、いけ好かなかったけど、今は腹立たしく、文句なしに嫌いだった。