窓の外をふと見ると、赤みが帯びた金色の空が、青色の闇に着々と移り変わりそうだった。


――早く帰っても、俺を待つ家族は、いない……。


活力、それは曜子だった。


あいつさえいれば、幸せな気持ちになれたのに――本当に曜子は、いなくなってしまったんだろうか?


今の俺に残された気持ちは唯一つ。怒りという名の気力だけだった。


「やあ、ごめんねぇ~? 秋山君。随分、遅くなちゃって」


静寂の中、ガラガラガラと開けられた扉に、一瞬ドキッとした。


猿田が嫌というほど、笑っている。


黄ばんだ前歯が突き出し、これほどまでに笑顔が似合わない大人を、俺は初めて見た。