――竹内りりか。またその名前? 一体誰なの? 


りんと父が言い合っている横をすり抜け、冷蔵庫へと向かう。


――やっぱり、牛丼には卵よ。くだらない大人達の喧嘩より、まずは御飯、御飯!


2人はソファーより少し離れた所で立ち尽くし、睨み合っていた。


「あの女の話は素直に聞くのね。嘘とか、疑ったこと無いわけ? 

そうよね。昔からそうだったわ! 貴方達は仕事の息がピッタリだった」


再度2人の横をすり抜けたが、私の行動など目には入っていない様子だった。


ソファーへと戻り、プラスチックの透明の蓋を開け、卵を割りいれた。出し汁の匂いが食欲をそそる。


次に紅生姜の小袋を破り、ふりかける。真っ赤に染まった御飯に満足し、口へと頬張った。


「クゥーン、クゥーン」