そんな空気にソワソワしていると、慌しい激しい靴音と、ガチャガチャと鍵を回す音がした。


やっと帰って来た? どうでも良いけど、お腹は空いてるんだよね……。


「ただいま! りんはいるか!」


怒鳴り口調の父だった。必死の形相に驚いた。


「お、お父さんだったの? びっくりしたよ、てっきり、りんさんが帰って来たのかと」


「いないのか?」


ネクタイを緩め、はずし、それをソファーに強く放り投げた。


「うん。夜ご飯どうする? どうしたのかな、りんさん」


父は明らかに、怒りの表情を浮かべていた。私は気を使い、呟くように言った。


「あいつ、綾までほったらかしにしていたのか!」