「あーあ、伸びきちゃってるよ……」


蓋を開け、箸で手早くソースを絡めた。ふと、キッチンの小窓が眼に入り、昨日の夜の出来事を思い出した。


――この窓から見えた人影のような者……聡子のオジサン? はははっ、そんな訳ないか。そうだったら真面目に怖すぎだよねー。


ソファーに座り、リモコンでテレビの電源を入れた。画面には普段はお目にかかれない、韓国ドラマが放送されていた。


韓流のイケメンに見とれながら、口に焼きソバを運ぶ。伸びきった麺は味が薄く、あまり美味しくなかった。


――そうだ、まてよ? この事、お父さんに言ったらどうなるかな? あの2人、益々喧嘩をする? 少しは猿田の役に立てるのかな。


多様な思考を巡らした。すっかりそのせいで焼きそばの味は、無味に変わり果てていた。