聞き覚えのあるこの声は……。


扉をそっと開いた。


「どうしたんですか? 聡子のお母さん?」


「あら、綾ちゃん学校は?」


険しい表情が一変し、慌てた顔になった。


「体調が悪くて早退しちゃったんです……りんさんに、なにか用ですか? 伝えておきますよ」


「いないの? 変ねぇ……いいの、いいの。小さな子供に言う事じゃないわ」


聡子の母親の、躊躇った面持ちが気になった。


「でも……お急ぎのような感じでしたよね? 私もう小さくないですよ。ちゃんと伝えておきます」


探りを入れて見たが、引っかかるだろうか。


「うーん……ちょっと家の主人が遊びに来てないかなって思って――変な意味じゃないのよ! いないなら、いいのよ」