掴まれた両手は放される事もなく、後ろの小さな黒板前と、硬く握られた拳に、ズルズルと押しやられた。


もつれる足先に、一瞬転びそうになる。


「私が曜子を殺したとでも言うの? そんな馬鹿げた話を信じるの?」


一番後ろには、体育着や鞄、音楽道具など、私物が置けるスペースがあり、そこまで等々追い詰められていた。


秋山は完全に冷静さを失っている。好きな人が亡くなった悲しみを、只たんに、ぶつけられる者が欲しかったようにも感じられた。


「曜子を返せ! 返せ! 返せ!」


「痛い!」


腰が丁度、棚受けにぶつかり擦れていた。握られた洋服が持ち上がり、拳が喉元を刺激した。