会計を済ませ、店の外へ出ると、そよぐ風を気持ち良さそうに、りりかは全身一杯に受け止めていた。


両手を横に広げ、くるくると回る。完全に酔っ払っているようだ。


「大丈夫か? 支払いは済ませたから帰ろう。タクシーを呼ぶぞ?」


ふわふわとした彼女は、急に私の胸の中に飛び込んだ。


「おい」


「じっとして」


坂にはサラリーマンや酔っ払った学生、タクシーが連なり騒がしいのに、ここだけ静寂に満ちたようだった。


心臓の音がトクトクと奏で、伝わる。それが妙に落ち着いた。