湿りを帯びた眼で俺をそっと見つめる。こちらまで、なんだか切なくなる……これが小悪魔の手なのかな。


「先生、私じゃ駄目かな……私、バツイチだよ。他の女と違う――出会いなんて探していないの。りんみたいに結婚なんてせびらない、興味なんてないの。だから――」


「酔いすぎだよ」


次の言葉を制した。このままじゃ、戸惑うだけだ。


「そうかな。酔っちゃったかなぁー? 帰りたそうな顔をするんだね、いいよ、もう帰ろう……」


感情がコロコロと変化する。誘ってきた表情をしてきたかと思うと、今度は不貞腐れる……俺はもう、そんな態度に乗る歳じゃないんだ。


「お会計をするから、店の外で待っていなさい。すぐに行くから」