side 裕一郎




「…――から転入してきました、渡瀬 雅です。よろしくお願いします」




パチパチパチ……




あれから死に物狂いで走って、なんとか朝のホームルームに間に合った。



先生からはちょっと怒られた。

けど、間に合わなかったらもっとヒドい説教が待っていたのかと思うと、寒気がする。



そんなことを考えながら、自己紹介をしている雅ちゃんを見た。





4月の半ばという微妙な時期に転校してきた雅ちゃん。



彼女は僕の幼なじみであり





小さいころからの僕の好きな人
でもある。






雅ちゃんは、普段からあまり表情を変えない。



たまに、嘘っぽくではあるけど微笑んだり、へらりと笑うこともある。




―――それがめちゃくちゃ可愛いっていうのは置いといて




でもそれだけだ。


小さいころから、雅ちゃんが怒ったのを見たことがなかったし、

泣いているところも見たことがない。




とにかく雅ちゃんは無表情で、どこか人間離れしているんだ。