「こら…あんた達ー!!何考えてんのよ!!」

今日も私は怒鳴っていた。


「あーあ、大変だねぇーお嬢は。」


皆は私の事を『お嬢』と呼ぶ。

理事長の孫娘だから『お嬢様』って感じなのだか、私が“様”付けが嫌だからと言って、『お嬢』になったのだ。


…本当は極道みたいで、これも微妙なんだけど。


「ねぇ、お嬢。今日ヒマ?」

「え…どうしたの?」

「んー遊びに行こうよ♪」


錐生は何時も私の傍に居る。でも付き合ってる訳じゃない。

『最強』という肩書が一緒だから、いつの間にか行動を共にするようになっていた。


「別にいいけど…私と何処行くって言うの?」

「そうだなぁ…俺は別に、お嬢が行きたい所なら何処でもいいよ。」


そう言って、錐生は微笑む。

何時もこうだ。何故か解らないけど、こんな感じにサラっと甘い言葉を口にする。

私は何時まで経っても慣れるはずがない。


「もうっ!そんなからかわないでよ…。」

「俺は何時でも真剣だよ?」


俯いた私の顔を、至近距離で覗き込む。吐息が掛かって、心臓がバクバク五月蝿い。


「分かったから、離れる!」

「ははっ、はいはい。」


クスッと、錐生は私の反応を面白そうに笑っている。

肩が震える度、金髪が揺れ、キラキラと光る。


「あー!もう笑わないでよっ。あたし、そんなに変?」

「いやっ…違うよ。ホントーにお嬢は面白いや。」


面白いって…何がよ?

イマイチよく解らない…。


「まぁいいや…。で、何処行きたいの?お嬢。」

「分かんない……から、駅ビルにでも行かない?」

「駅ビル?いいよ、お嬢が行きたいなら♪何なら俺が、お嬢に似合う服、選んであげようか?」


錐生が服選び?まぁ、錐生はオシャレだから…一回ぐらい選んでみて欲しい。


「んー…、じゃあ試しに。」


すると、錐生は目尻を細めて、ホッとしたような表情で笑った。


「よし―。じゃあ行こうか。」


そして私は校舎を出た。