待ち合わせ場所に着くと、その時には、あと5分で10時になる頃だった。

辺りを見渡してみるけど、まだ錐生の姿は無い。

まぁ今日は、少し気長に待つか……。

そう思って、駅の目の前にあるベンチに腰掛ける。

日曜日という事もあって、まだこの時間なのに、街は沢山の人で溢れ返っていた。

こんな所で、ちゃんと見つけられるのかな…?


ぼーっと街を眺める。すると、後ろから、誰かに肩を叩かれた。

振り返るとそこには、ご満悦な顔をした錐生が立っていた。


「早いね?」

「早いって……5分先に来ただけだよ?」


立ち上がろうとする私に、すっと手を差し延べてくれる。


「…ありがと。」

「どう致しまして♪お嬢、やっぱりその服、似合うね。」


何処からどう見ても、超清純系な服装。錐生は、フード付きのパーカーに、ラフなジャケットを羽織って、ダメージ加工されたジーンズを履いている。


「……なんか浮いちゃうね。」

「そう?俺は良いと思うよ。」


ニコッと笑って、錐生は歩き出した。


「行こう、お嬢。」

「え…手、繋ぐの?」

「うん。だって俺ら、恋人同士だし♪」


くいっと持ち上げられた手が、錐生によって、指同士が絡まる。

「恋人繋ぎ。」

「……///」

「ほら、照れないの。行くよ?お嬢。」


きゅっ…と優しく握られた手からは、錐生の体温が伝わってきて、鼓動のリズムが狂う。

錐生の横顔をそっと覗く。


どうしてだろう……。何時もより、何倍もかっこよく見える。

整った顔が、錐生をより凛々しく魅せる。

こんなに……かっこよかったっけ…?

何時もは意識なんてしたことないのに。

恋人だからかな?

それとも………………?