「きゃー颯馬カッコイーっっ」
「颯馬先輩ー!!」
そんな女子たちの黄色い悲鳴を背にしながら武道場に歩いてくるのは…同じ剣道部の早瀬颯馬(はやせ そうま)先輩。
あたしは正直あの人が嫌い。
あの人も、あたしのことは嫌いなんだろう。
だって…
「おい美沙。アホ面でこっち見てんじゃねー!」
こういうこと言うし。
「アホ面じゃないし!てゆーかそっちこそ、そのドヤ顔やめてください!」
一応先輩後輩ではあるものの、あたしがこの剣道部に入部して早一ヶ月…いつのまにか上下関係と呼べるものは完全に消滅していた。
「もうやだぁー」
先輩と一通り喧嘩しあったあと、あたしは親友の麻由佳に愚痴る。
「美沙かわいいからさ。先輩もちょっかいかけるんだよ。」
いやいやいや。絶対ないでしょ。