「で?一花がときめいた相模は、結局仁科さんに本気なのか?」
投げやりな声。子供っぽいなあ。
でも、それもまた、私には嬉しい。
「きっと、相模主任の気持ちはどんどん仁科さんに取り込まれていくよ。
今はその真っ最中ってとこかな」
「は?真っ最中?」
「うん。相模主任が仁科さんを見る目は、歩が私を見る目と同じだもん」
「俺?」
「そうだよ。会社の未来を考えて私を手放したくせに、結局根回しに一年近くかけて取り戻すほど私に惚れている歩の目と、仁科さんを見る相模主任の目は同じ。だから、相模主任が仁科さんを思う気持ちは本気も本気だよ。うん」
「うんって……」
私の言葉に茫然としている歩に、私は「大丈夫大丈夫」と頷きながら、私は歩の首に両手を回して優しく抱き寄せる。
そして、彼の耳元にそっと呟いた。
「仁科さんのことは、きっと相模主任が幸せにしてくれるよ。私が歩に幸せにしてもらってるように、ね。だから、安心していいんだよ」
私の言葉に、ぴくりと肩を揺らした歩は、しがみついている私を引き離そうとするけれど、私は歩の肩に顔を埋めてそれを拒んだ。
「この先もずっと歩が背負っていく、被害者の方への謝罪の気持ちを失くすことはできないけど、それでも歩だって幸せになっていいんだよ」

