ほどよいあとさき



「俺は、たくさんの人に支えられて生きてきて、こうして一花との結婚も決まって、幸せに暮らしてるんだ。
だからこそ、仁科さんにも幸せになってほしい」

「そうだね。仁科さんには、私達に負けないくらい幸せになって欲しいね」

「ああ……。だから、相模が仁科さんとどういう気持ちでつきあっているのかが、気になるんだ」

「そっか……。気になるね。でも、きっと、大丈夫だよ。相模主任は仁科さんをもてあそぶなんてこと、してないよ」

「え?」

考え込む歩に向かって、私は明るい声で頷いた。

そんな私を歩は怪訝そうに見遣った。

「私が相模主任の下で会社のことを教わっている時、相模主任は『椎名を諦めないでいてくれてありがとう』って私に言ってくれたんだよね。それに、大切な女の存在は男を強くするんだなって呟いてた。歩と私の結婚が決まって、一番喜んでるのは俺だとも言ってたっけ?羨ましいって、あの男前の顔が遠い目で語る横顔にはときめいたなあ。……あ、そんな睨まないで。一般論一般論」

私が相模主任のことを甘い声で語る様子に、歩はじろりと厳しい視線を向ける。

さすがに私が本気で相模主任に惚れてるなんて思ってないだろうけれど、いい気はしていないようだ。

嫉妬、だ。

ふふっ。

ちょっと嬉しい。

くすりと小さく笑った私に、更に苦々しい顔をした歩は、ため息をついた。