「俺は別に仁科さんのことを好きだな、とか思ってないし、親友の相模を彼女に取られると考えて切ない気持ちを抱えてるわけではないからな」
「え?……ははっわかっちゃった?」
私の気持ちは歩に筒抜けのようで、笑ってごまかした。
何でもわかっちゃうんだな。
恥ずかしい。
ごまかすような笑顔を作って歩を見たけれど、それでも、やっぱり歩は暗い表情を変えないまま俯きがち。
そんな様子に、私の軽い笑い声も途絶えてしまう。
「どうしたの?」
「ん。相模と仁科さんが付き合ってるのなら、それでいいんだけど、それもしっくりこないんだよな。
仁科さんが相模の家に入るところとか、相模が仁科の手を引いて買い物してるところとか、目撃情報が多々あるんだけど、相模の様子から、なんだかなあ……」
「でも、それって、付き合ってるってことじゃないの?」
仁科さんが相模主任の部屋に出入りするってことは、二人は特別な付き合いがあるってことじゃないのかな。
女性に対して一線を画しているような相模主任が、女性をだれかれ構わず自宅に呼ぶなんて想像できないし、仁科さんが恋人でもない男性の家に簡単に行くとも想像できない。
仁科さんとは、新入社員が配属された日の宴会で多少話したけれど、その時だって、おとなしくて守ってあげたいような、それでいて男性に対しては苦手意識が強いような感じがした。
あ、私と一緒で、お酒は強いって言ってたけど。
そういえば、確かにあの日も相模主任は仁科さんを気にかけていて、かなり近い距離で彼女を構っていたっけ。

