「どうしたの?」
問いかけると、歩は一瞬天井を見上げた。
そして、何かを決めたかのように、軽く息を吐く。
「その相模なんだけどな。今、妙なんだよ」
「妙?」
「というよりも、新入社員の仁科さんとつきあってる……んだと思う」
「仁科さん……って、相模主任の下で働いてる綺麗な子だよね」
「ああ。今年の新人の中では見た目も実力もトップだな」
「あー、それって、いろいろな部署の人から聞くよ。すごく仕事ができるから相模主任が可愛がってるって」
思い出すように呟く私に、歩は「可愛がってる、だけじゃなさそうなんだけどな」と漏らす。
相模主任の同期として、というよりも親友としての付き合いをしている歩は、何故か不安そうな表情で考え込んでいる。
相模主任は確かに女性からもてるけれど、今は特に恋人はいないって聞いているから仁科さんとどうこうなっても問題なさそうなんだけどな。
あ、でも。
「相模主任と今村さんは、何の関係もないの?」
「ん?今村?あー。あの二人は大学も一緒だったから仲はいいけど、何もない」
「そうなんだ……。で?仁科さんと相模主任が何かあると、まずいの?
歩、ちっとも嬉しそうじゃないよ?」
もしかして、自分の親友を仁科さんに取られる気がして寂しいとか?
それとも、歩も仁科さんのことを……?なんて、ないない。
もしそうだとしても、歩は私の旦那様になるんだから、誰にも譲らない。
ぶんぶん、と首を横に振る私に、歩は呆れた目をしてため息を吐いた。

