「私も、やっと、歩を取り戻せたんだよね」

ようやく呟いた言葉は、思いのほか震えていて、自覚していた以上に私は緊張しているんだと気づく。

「歩は、私のものだって、もう離れなくてもいいって、笑ってもいいのかな……」

か細い声は、歩にちゃんと届いたのかどうか、不安だけれど、この声が私に出せる精一杯の声。

一年間歩から離れて、もう懐に入ることはできないと諦めていた反動からか、思うように唇が動かせない。

ずっと願っていた。

歩のもとに戻りたいと、ずっと願っていた。

その願いを、今叶えてもいいのだろうか。

「私が歩を取り戻しても、会社は……それに、歩は、大丈夫なの?」

確認するように呟き、そっと顔を上げる。

すると、私の動きに合わせるかのように、歩はすっと私の肩から顔を上げた。

まだ少し赤い瞳だけど、涙はもう流れていないようで、ただ照れくさそうな歩のレアな表情が目の前にあった。

「会社は大丈夫だ。社長や相模と、そして夏乃の無謀な要求を知って激怒した夏乃の父親が、会社の為に動いてくれたから」

「相模……主任も?」

「ああ。どちらかと言えば、相模のおかげで俺は一花を取り戻せたんだ」

「ど、どういうこと?」