ほどよいあとさき



その玉突き事故で、唯一助かった高校生の女の子への報道の過熱と共に、事故の原因となった歩の父親に関する取材は時を追うごとにエスカレートした。

遺された歩たち家族への罵倒や中傷はもちろんあったし、脅迫まがいの電話も多く、歩のお母さんは愛する夫を亡くした悲しみを浄化させる間もなく体調を崩して入院。

本来なら、そんな状態で高校に通うことも、生活していくことも不可能となるだろうけれど、歩と歩の家族に差し出された未来への光。

『君たちが犠牲になることはないんだよ。お父さんをあそこまで働かせてしまった私達にも、責任があるんだ』

「KH建設」という、大きな会社の社長が直接歩の家まで来て、頭を下げた。

そして。

『お父さんが働いていた会社は、KH建設の子会社なんだ。利益を上げるために、無理なスケジュールでトラックを運転してもらって、そしてお父さんの過労による居眠り運転につながったんだ。居眠り運転は、決して許されるものではないが、お父さんが起こした事故の責任の大部分は、親会社であるうちの会社にある』

社長と、KH建設の顧問弁護士さん。

二人は、遺された歩の家族がちゃんと生活していけるだけの援助を申し出てくれた。