会議室のドアの横にあるボックスを開いて、暗証番号を入力すると、カチャリと音がした。
そっとドアを押して
「椎名主任、パソコンのセッティングなら、私がしておきますけど、えっと」
振り返り、背後にいる椎名主任を見ると、くすりと笑ってさっさと部屋の中に入っていく。
「主任……?」
椎名主任は私に構う事なく中に入り、部屋の奥に常備されているテレビを操作し始めた。
電源を入れて、リモコンを手早く操作する。
そしてテレビの画面に映し出されたのは。
「あ、相模主任」
わが社のカリスマである相模恭汰。
建築士として、わが社だけではなく世間にその名を知られている若き天才。
優秀な仕事ぶりだけではなく、その見た目の良さも加わり彼の知名度は誰もが知るところだ。
こうしてテレビで顔を見る機会も少なくはない。
同じ会社、そして同じ建物で働いているけれど、社内で本人を見かけるよりも、こうしてテレビや雑誌で見ることの方が多いかもしれない。
あらゆる方面から多くの声をかけられ、忙しくしている相模主任が、朝からテレビに出ているのは、珍しくもない。
けれど、椎名主任はどうしてここでこの番組を見ているんだろう?
無言で見つめている私に気づいたのか、椎名主任が苦笑しながら呟いた。

