ほどよいあとさき



二人って、一体?

二人は以前からの知り合いなんだろうか?と思いながら二人を交互に見ていると、はっとしたように私に向き直った仁科さんが呟いた。

「すみません。ぼんやりしてました」

焦ったようなその声も、震えていて、心配になる。

「相模主任と知り合い?」

「いえ、さっき、配属の引き取りに来てくれた時に初めて会って……あ、あの。私が相模主任のファンというか、憧れているというか……。相模主任の模型をじっと見ていたところをからかわれたというか……」

あわわと言葉を繋ぎながら何かを伝えようとしてくれるけれど、焦りと動揺は隠せていなくて、手に持っているビールの瓶が揺れている。

「慌てなくてもいいよ。それに、緊張しなくていいし。仁科さんも飲もうよ」

私は仁科さんの手からビールを取ると、テーブルにあったグラスになみなみと注いで手渡した。

「あ、ありがとうございます」

私から素直にグラスを受け取った仁科さんと、乾杯、と言いながらグラスを合わせる。

「うわっ。いい飲みっぷりだね。もしかして、お酒強い?」

「あ、はい。弱くはないんです」

一気にビールを飲み干した仁科さんは、けろりと笑ってグラスをテーブルに置いた。

見た目の儚さを裏切る飲みっぷりが何だか気持ち良くて、私も同じようにグラスを空にした。

「私も仁科さんと同じ。弱くないのよね」

「……そのようですね」

くすくす笑う仁科さんのグラスに再びビールを注ごうと思ったけれど、瓶の中にはほとんど残っていなかった。

近くのテーブルを見回しながら新しいビールを探していると。

「飲みすぎるなよ」

頭上から、聞きなれた声が落ちてきた。