「歩、これって一体どういう……」
体中から力が抜けて、思わず崩れそうになる。
それでも私の手を握っている歩に引き寄せられてどうにか持ちこたえた。
「待たせて悪かったな。俺と一花は結婚するから。それだけはちゃんと理解しろ」
耳元に囁かれる声を受け止めた。
「ちゃんと話すのは、宴会が終わってからにしよう。今日は、一花が俺との結婚を控えているということをこの部署に知らしめられればそれでいい」
何から何まで理解できない。
私と歩は一年前に別れたままで、結婚の約束どころかよりを戻した記憶もないのに。
いつの間に私は婚約者になっていたんだろうと、既に思考能力の限界を超えた頭で考えてもちゃんとした答えは出せない。
どうしたって悩みが尽きない私に、歩は小さな声で呟いた。
「一花、俺のところに戻ってこい。もう、夏乃がらみの障害もなくなったし、俺だけを愛してくれればそれでいいから」

