歩の言葉が理解できなくて、反論しようとした私を制するように、私の腕を掴む歩の手に力が入った。
『黙ってろ』
とでもいうような強さに、何も言えず、ただ歩を見つめる。
しっかりと部長に視線を向ける歩を見ていると、私が期待している言葉が今にもその口から出てきそうに思える。
私をずっと歩の側に置いてくれるんじゃないかと、期待する自分に、苦笑する。
だけど、そんな感情を抱えても、仕方がない。
歩を愛していると、歩と別れたくなかったと、そう気付いて。
自分が歩との別れを選んだ過去を、どれほど後悔したか。
自分の本音に折り合いをつけるにはどうすればいいのかと悩んでいる私には、今の歩の言葉には期待以外の何も感じられなくて。
できるならば、たとえ今この瞬間が夢だとしても。
ずっとこの瞬間が続けばいいと思えてしまう。
私と結婚すると言って、私の手をぎゅっと握ってくれる歩の体温を感じられる今が、このまま永遠に続けばいいと思わずにはいられない。
「結婚……」
したい。
歩と結婚したい。

