わが社に入社を希望する大学生の多くは相模恭汰という人間に会いたい、一緒に仕事をして設計を学びたいと願っている。
毎年新しく作られる会社案内にも相模主任の顔写真付きのコメントが必ず掲載されていて、大学生からの資料請求はその会社案内が欲しくて、というのが一番の理由だ。
そして、わが社の個人株主の多くは株主総会で相模主任に会えることを株式保有の目的とし、株価の変動は二の次だという。
取締役でもなんでもない相模主任が株主総会に出席する義務はないけれど、そんな株主の要望に応えるべく、設計デザインコンクールの大賞を受賞して以来、相模主任は総会の会場の片隅に立ち、議事を見守っているらしい。
そんな相模主任をちらりとでも見ることができる株主総会は別名、
『相模恭汰ファンクラブの集い』
とも呼ばれている。
会社の業績や経営内容を株主や世間に知らせる事が目的の総会は、ともすれば株主からの批判や悪意が含まれた意見によって紛糾することもあるけれど、わが社に限っては、相模恭汰という存在のおかげで和やかに進み終了している。
特に業績悪化や取締役たちのスキャンダルもないからだけれど。
株主総会の議事をスムーズに進行させる役割も果たす相模主任は、本当に偉大だ。

