「いや。恋愛に他人の口出しは無用だから。俺はこれ以上は何も言わないし、椎名のことをまだ好きだっていう神田さんを見守るだけだ」
「え、そ、それは、その……」
歩のことをまだ好きだと、私がはっきりと言ったわけではないのに、相模主任の中ではそれはもう確定事項のようで、どう言葉を繋げていいのかも、どんな顔を向ければいいのかも、わからない。
「とにかく、今日の宴会には来い。設計部の宴会は大所帯だしみんなかなり飲むから盛り上がり方もすごい。せっかく今までとは違う場所で仕事をしてるんだから、色々経験してから経理部に戻るのも悪くないぞ」
「それは、そうなんですけど」
相模主任の言葉や表情からは、私にどうしても宴会に参加してほしいという気持ちが露わに見える。
わざわざ夏乃さんが宴会に参加しないと教えてくれることからも、私の勘は当たっているような気がする。
すっきりとしない気持ちを抱えながら、どうしようかと迷っていると、相模主任はにやりと笑い、楽しそうな声をあげた。
「じゃ、体調も悪くないようだし、ちゃんと宴会にくるんだぞ。来て、新入社員を歓迎してやれ」
「あ、はい……わかりました」
こうして何度も私を宴会に誘ってもらっているのに、断るなんてできない。
それも、目の前で誘ってくれているのは、わが社の顔である相模主任。
断るなんて恐れ多いことができるわけがない。
設計に携わっているわけでもない私が、こうして何かの縁で同じ部署で仕事をさせてもらえるだけでも幸運以外の何物でもない。

