けれど、椎名主任にしてみれば、部下を他部署に派遣するための上司としての割り切った行為。
私を説得するためだけの業務の一環。
……なんだ。
そうなんだ。
そう思って、私が肩を落としてがっかりしたとしても、仕方がない。
私はやっぱり、椎名主任を見ればときめくし、その声を聞けば体は震える。
そして、見つめられれば、くらりと意識が遠くなりそうになる。
別れて一年経っても、私が椎名主任の事を好きだと思う気持ちには変化もなく、それよりも、一層私の気持ちを掴んで離さない椎名主任……ううん。
私は歩に囚われたままだと実感させられただけだ。
この先、いつになれば歩のことを忘れられるんだろうかと、落ち込む気持ちに気づかないふりをして、日々笑顔を浮かべて仕事をすることに疲れていた私。
そんな私にとっては、仕事の上でも歩から離れて、相模主任のもとで仕事をすることになったのは、いい流れだったのかもしれない。