そして、翌日の土曜日に初めての休日デートで海に連れて行ってもらった時、冷たい風を遮るように私を抱きしめながら『俺の女にならないか?』と言ってくれた。

既に気持ちは歩にとらえられ、好きという気持ちで溢れていた私には、一つの返事しか浮かばなかった。

『椎名主任の側にいたいです』

その言葉しか、言えなかった。

私のその言葉は歩の表情を喜びで溢れさせ、一瞬のあと、強く抱きしめられた。

けれどその後、苦渋に満ちた表情に変わった歩から聞かされたのは。

歩が抱えている、そして一生背負っていかなければならない苦しい過去。

ううん、歩だけじゃない、歩の家族全員が背負い続けていくに違いない重い過去だった。